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インフレを抑制する上で、十分過ぎるほどの景気後退懸念からの利下げとあって、将来的に、海外投資家が両国の経済先行きに見切りを付けて、豪ドル売り、NZドル売りに拍車が掛かるようなことがあれば、為替市場は混乱することはいうまでもない。 実践的なFXトレードの手法に入る前に、1997年に発生したアジア通貨危機を振り返っておきたい。
1997年7月、タイの通貨バーツの下落に端を発する金融混乱が、アジア各国に飛び火して、アジア各国の経済に大打撃を与え、金融危機に直面した。 経済成長を続けていたタイの貿易収支が赤字になると、ヘッジフアンドは、タイバーツの大量売りに出る。
タイ通貨当局は、通貨切り下げをせずに、外貨準備を取り崩して対抗するが、ヘッジフアンドの空売り攻勢に屈することになる。 1ドル24.5バーツが1ドル29バーツまで下落し、IMF(国際通貨基金)が救済に乗り出すが、信用を失ったタイバーツの下落は止まらず、1998年1月には、1ドル56.0バーツまでバーツ安が進行する。
バーツの急落は、タイ証券取引所の下落を招くとともに、不動産バブル崩壊、緊縮財政による総需要の減退と連鎖して、好景気に沸いていたタイ経済は、バーツの下落によって一転、不景気のどん底に陥ることになる。 タイ経済の金融危機は、アジアの通貨危機へと発展し、ロシア危機、ブラジル危機を引き起こす要因にもなっている。
通貨危機への懸念は、為替相場を大きく動かす材料となるため、ポジションの取り方次第で、大きな利益を得るチャンスになるが、豪ドル、NZドルに続いて、韓国ウォンが下落している状況では、否応にも1997年に発生したアジア通貨危機の再来が懸念されるところ。 円を売り建て、金利の高い外国通貨をスワップで買い建てる、というこれまで投資家に利益をもたらしたFXのメカニズムは通用しなくなっている。

それでは、円を買い建てて、金利の高い外国通貨売り建てるとなると、売り建てた外国通貨には金利分の負担が発生するため、基軸通貨ドルに対して、売り建てた外国通貨が下落する局面でなければ、損失が発生することになる。 FXで大儲けした投資家に共通するのは、レバレッジを効かせて、少ない資金で大きな取引をしていたとい点である。
50倍、100倍と、レバレッジを効かせている以上、取ったポジションとは逆の方向に、為替相場が動いたケースでは、一瞬にして大きな損失を被ることになる。 このため、FXの元手として300万円用意していたとしても、一度に300万円を投じるのではなく、半分の150万円にして2回に分けたり、3分の1の100万円にして3回に分けていると考えられる。
本書では元手10万円としているが、仮に30万円の元手を用意した場合は、万が一のことを考えて、3分の1の10万円からFXをはじめたほうがいいだろう。 為替相場とのリズムが合えば、儲かるときは面白いように儲かるのがFXである。
大きく儲かって、つい気が緩んで、逆指し値などのリスクヘッジを軽視してしまったときに、為替相場が急激に変動して、元も子もなくしてしまう話は、よく聞く話である。 元手が多いに越したことはないが、レバレッジを効かせる以上は、リスクに対しては最大限注意を払っておきたい。
証拠金に対してレバレッジは何倍まで効くのか、ロスカットルールなどは、あらかじめチェックして置かなければならないが、レバレッジに関しては、最初は5倍までとして、トレードの経験を積んでいきながら、トレードスタイルと勝率に合わせてレバレッジを引き上げていくのがいいだろう。 10万円の証拠金でも、5万円の為替差益を得ることもあるのがFXだが、高いレバレッジで為替差益を狙う場合、ハイリターンとハイリスクは表裏一体。
大きなリスクを背負う以上は、万が一に備えて、資金を温存しておくくらいの用心深さが必要である。 10万円の証拠金で5万円の為替差益を何度も繰り返すことができれば、あっという間に、元手は100万円、300万円と殖えていくことになるが、2005年〜2007年にFXで大儲けした個人投資家の多くは、為替差益で儲けたわけではない。

円安局面の低金利を利用して、高金利の外国為替でスワップ金利を取りに行った結果である。 スワップ金利とは、金利の低い円で、金利の高い外国為替を買った場合、外国為替の金利から円の金利を差し引いた分の金利を差す。
スワップポイントといわれるこの金利は、毎日利息として付くことになる。 高金利通貨として知られる豪ドル、NZドルと低金利の円とのあいだで、元手10万円、100倍のレバレッジを効かせて、1000万円の買い建て玉でスワップを取りに行ったとしよう。
豪ドル金利を8%として、円金利を1%として計算すると、スワップポイントは7%となり、1000万円に対して年間7%、70万円の利息が発生する。 元手3000万円で10倍のレバレッジを効かせたら、年間のスワップポイントは2100万円。
FX長者の多くは、レバレッジを効かせてスワップポイントを取りに行って、成功した人々といっても過言ではない。 FXにおけるスワップ取りは、為替変動リスクが乏しく、高金利の外国通貨の場合、極めて有効なトレード手法といえるが、為替変動リスクが経済状況などから大きくなった場合、為替差損でスワップポイントは消えてしまうことになり、為替変動幅がより大きなものになれば、数万円、数十万円単位で入ってくるスワップポイントだけでは、カバーできないほどの損失を被ることもある。
逆説的な言い方をすれば、世界経済が再び拡大局面に入り、日本経済だけが取り残される形で景気の足踏みが続き、低金利が続いた場合は、低金利の円を売ってレバレッジを効かせて、高金利の外国通貨を買いスワップを取りに行くことで、脱税したくなるほどのスワップポイントを手にすることができる。 とはいえ、当面は、そのような状況を望めるはずもなく、スワップポイントを追い求める局面ではなくなったことを肝に銘じておきたい。
FXに限らず、楽して儲かるしくみは、みんなが知ることになれば、お終いというのが金融取引のセオリー。 サブプライムローンの影響は、最も軽微といわれる日本ではあるものの、景気後退局面に入ったことで、日銀が利上げに踏み切る状況にはないものの、日本の金利水準は、常識では考えられないほど低く、景気が本格的に回復してくれば、いつ利上げステージに入っておかしくはない。
今すぐの必要はないが、先々の利上げ→円高局面に対応したFXのトレード手法をいくつかシミュレーションしておくべきだろう。 円安低金利を背景として、高金利の外国通貨をスワップで回すFXのトレードが幕を閉じたいま、FXは新しいステージに入ったと考える必要がある。
注視すべきは、基軸通貨であるドルを発行するアメリカ合衆国の経済動向である。 サブプライムローンの焦げ付き問題が表面化した際に、急激なドル安となり、円を売って、高金利の外国通貨を買っていた個人投資家は、総額で数千億円の損失といわれる大打撃を喰らっている。

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